静脈瘤Q&A
- レーザーで血管を焼いてしまって大丈夫なの?
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大丈夫です。
レーザーで治療するのは伏在静脈という血管です。足の静脈は深い所を走る太い深部静脈系と、表面を走る表在系(伏在静脈)に分かれます。足の血流は深部静脈が重要な役割を果たすため、表在静脈である伏在静脈をレーザーで焼灼しても問題ありません。そもそも静脈瘤の血管は逆流しており、悪さしかしていませんのでレーザー焼灼してしまった方がうっ滞がなくなり血流はよくなります。
足の静脈は深部静脈の血流が非常に重要です。深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)により深部静脈の流れが遮断している方に手術治療は禁忌です。(手術してはいけません。)
ちなみに、狭心症や心筋梗塞に対する手術:冠動脈バイパス術(CABG)でグラフト材料として大伏在静脈はよく使用されます。静脈瘤でない方でも大伏在静脈を採取しても影響はほとんどないのが現状です。(取ってしまっても他の血管がカバーしてくれます。) - 高齢ですが手術できますか?
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手術に年齢は関係ありません。お元気で自分で歩かれている方で手術を希望される方なら手術適応と考えております。術前検査(採血、レントゲン、心電図)にて問題なければ手術を行います。当院では90歳以上の元気な方も手術されております。手術をして今まで以上に元気に歩いて頂けるようスタッフ一同協力させて頂きます。
- 日帰り手術と入院手術どちらがいい?
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どちらでも対応可能です。
手術をした方は翌日の診察が必要となります。また手術は麻酔を使うので当院では術後の運転は控えてもらっています。そのためか、翌日受診するのが面倒な方、遠方の方などは入院を選択されたり、ご高齢の方、入院保険に入られている方などは1泊入院をご希望される方が多いと思います。 - 手術は痛くないのですか?
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「痛くない手術」をうたっているクリニックはありますが、痛くない手術は存在しません。しかし、現在最新の治療のレーザーは今までの手術(ストリッピング術)と比べて痛みが少なくなっているのは確かです。しかし、麻酔をする時は少し痛みますし、術後もしばらくは痛みやつっぱり感を感じる方がいらっしゃいます。ですが痛み止めがほしいという方はほとんどいらっしゃいません。そのような症状は月日とともに消えていきます。
- TLAとはどんな麻酔ですか?
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TLAとはtumescent local anesthesiaの略です.tumescentとは「膨れた」という意味、local anestheiaは「局所麻酔」という意味です。非常に薄い麻酔薬を静脈の周囲に大量に打つ=膨らませることで、静脈をしぼませて静脈壁とレーザーとをくっつけることで、焼灼効率を上げる目的があります。もちろん鎮痛効果もあります。ヘルニアの手術や脂肪吸引などの美容形成の手術でも用いられる麻酔です。
- 傷は大きいですか?
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傷跡は非常に小さいです。当院で使用しているレーザー(エンドサームレーザーEndotheme 1470nm)は5Fr=1.7mm程度の傷で手術が可能です。最新のレーザーは非常に細く、3Fr=1.0mmのものが開発されほとんど傷は残りません。
スタブアバルジョンと言われる瘤切除の方法も細いフックを用いて、こぶをとりますので、非常に小さい傷(小さなほくろ程度)で手術可能です。ですが、こぶが多ければ多いほど、小さな傷が増えてしまいます。瘤切除が必要ない早い時期に手術をお勧めします。 - 面倒をみる必要のある家族がいるため、手術に踏み切れない。
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「家におじいさんが待っているから手術できない」といった声をよく耳にします。
そういう家を留守にできない方は、個室にご家族とともに入院して頂き(ご家族は付き添いという形。ベッド、食事も用意できます。)、ご本人は静脈瘤レーザー治療をおこない、非常に満足された方がたも多くいらっしゃいます。また障害のある御家族がレスパイト入院をしている間に、静脈瘤の手術を行う事も可能です。なんでも御相談して下さい。 - 下肢静脈瘤の血栓が脳梗塞になるの?
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可能性は少ないです。
下肢静脈瘤内は血液がうっ滞するので血液は固まりやすくなります(Virchowの3微)。固まると血栓性静脈炎に発展する可能性があります。赤くはれ上がり、痛みを生じます。皮膚炎を繰り返すと、皮膚が硬く、黒ずみ、色素沈着を起こしてしまいます。しかし皆さんが心配される深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)を引き起こす事は少ないとされています。また血栓が深部静脈から血液の流れに乗って飛んで行ってしまう先は心臓(右房)→肺動脈→肺実質です。ここでトラップされますので、心筋梗塞や、脳梗塞になる可能性は少ないです。
可能性は少ないと述べましたが、ゼロではありません。まれに心臓に穴があいていて、穴を通して血栓が動脈系に飛んでいってしまう事があるからです。しかし通常は心臓の血液の向きは左心系→右心系ですので、流れに逆らって右心系→左心系へと血栓が飛んで行くのはまれです。ですが、努責をしたりすると血栓が右心系→左心系に飛び、脳梗塞の原因になる可能性はあると言われています。非常に確率は低いですが、奇異塞栓と言われています。 - 色素沈着、シミ、湿疹は治りますか?
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静脈瘤はうっ滞性皮膚炎による皮膚障害を起こす事も多いです。かゆみから始まり湿疹、シミ、色素沈着、潰瘍と進行していきます。適切な治療をすれば湿疹は改善し、色素沈着も改善します。しかしあまり濃くなってしまうと、完全に消えるのは難しくなります。早めの治療をお勧めします。
- 重症の潰瘍があるので治療は諦めていますが、潰瘍は治るのですか?
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静脈瘤によるうっ滞性潰瘍は治療すると治ります。
しかし根気強い圧迫療法が必要です。術後も適切な圧迫治療を継続する事で潰瘍は治ります。あきらめずに受診しましょう。
ですが、潰瘍になる前に治療を心がけましょう。専門医としての意見としては色素沈着を起こす前の治療をお勧めします。色素沈着もある程度は消退しますが、完全んに消えない事も多いです。ボコボコとコブが出る前に治療をすると、追加の瘤切除術も必要なく、レーザー治療だけの傷(約1~1.7mm程度)だけで治療できますので、短時間、痛みも少なく、傷も小さい治療が可能です。 - 足のむくみはよくなりますか?
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足のむくみは静脈瘤の症状の一つです。手術をすると浮腫みが改善する方はいらっしゃいます。しかし足のむくみの原因は人それぞれです。心不全、腎不全、甲状腺機能低下症、リンパ浮腫、加齢によるものなど、様々ですのでまずは原因検索が必要です。
最近美容目的でむくみをとるために静脈瘤の手術をするクリニックが見られますが、私は過度な美容目的の手術は推奨しません。 - 抗凝固薬、抗血小板薬(血液サラサラの薬)を飲んでても手術はできますか?
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手術可能です。血液サラサラの薬を止めて手術する必要はありません。しかし内出血が多く(にえる)なります。大量出血にはなりませんので、必要な抗凝固薬や抗血小板薬を中止する方がリスクが高いと判断した場合は中止せず、手術を行います。しかし中止しなくてはならない薬(事項)はあります。
- 中止するべき薬はありますか?
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手術前後に中止が必要な薬があります。副作用に血栓を作りやすくする薬があります。たとえば骨粗鬆症のある種類の薬は血栓のリスクが上がるので、術前術後の中止が必要です。(しかし骨粗鬆症の薬で中止が必要とならないビタミン剤もあります。)その他はホルモン剤や抗癌剤などが中止の必要があります。
薬の中止に関しては医師が判断しますので、来院時は薬手帳や、薬の内容がわかるものを持参してください。 - 妊娠出産後に静脈瘤に気付きましたが治療できますか?
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妊娠、出産を契機に静脈瘤になる方は多いとされています。しかし妊娠中は手術は禁忌(手術できません)です。良性疾患ですので、弾性ストッキングを着用し、育児が落ちついてからの治療をおすすめします。超音波検査は胎児にも害はありませんので、一度検査をおすすめします。
- 手術は保険がききますか?
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当院では保険適応の手術です。2011年から保険適応となっております。保険適応のあるレーザー機器を使用しています。
実際は3割負担、2割負担、1割負担、入院or日帰り手術とそれぞれ違いますので窓口にご相談ください。
また静脈瘤の圧迫療法に必要な弾性ストッキングは保険適応外となります。当院では1足3500円~で取り扱っております。 - 瘤切除術は追加料金がかかるのですか?
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かかりません。下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術の手術料(保険診療)に含まれます。
- メスは使いますか?
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レーザー治療でメスは使用しません。瘤切除の際も約1~2mm程度の針を用いて治療します。
- 手術体位は?
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大伏在静脈瘤の場合は仰臥位(仰向け)。小伏在静脈瘤の場合は腹臥位(うつ伏せ)で手術を行いす。両方の場合は手術中に反対向きに体位変換を行います。
- 運転はいつからできますか?
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当院では麻酔を使用するので当日の運転は控えてもらっています。翌日から運転しても大丈夫です。手術当日は公共の移動手段や、ご家族などに迎えに来てもらってください。
- 手術時間はどれくらいかかりますか?
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手術は片足30分~1時間程度です。 小伏在静脈で焼灼距離が短い場合は10分くらいで終わる方もいます。
- 全身麻酔ですか?
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静脈麻酔+局所麻酔で行います。点滴の麻酔で少し寝ている間に局所麻酔を皮膚に注射します。少量の麻酔で行うので会話できます。会話しながら治療を進めていきます。ぐっすり眠って手術を行いたい方などは静脈麻酔を追加する事は可能です。しかしその必要がない人がほとんどです。