血管外科
血管外科について
”血管に病気がある人は全身に病気があると思え”と言われています。動脈硬化からはじまり、大動脈瘤、大動脈解離、閉塞性動脈硬化症など様々な動脈病変、深部静脈血栓症、下肢静脈瘤等の静脈疾患など血管病変は多岐にわたります。高齢化が進む時代に血管病変の治療は非常に重要な役割を果たしていると思われます。
主な診療内容
当院では造影CT、ドップラー超音波検査、ABI検査等で診断にあたります。また手術適用の静脈瘤がある場合は血管内焼灼術(レーザーによる治療)を行っています。
<下肢静脈瘤とは>
足の静脈は容易に逆流するため、逆流しないように逆流防止弁がついています。その逆流防止弁が壊れてしまい、静脈血が逆流、うっ滞する事によって、静脈が拡張、ボコボコと瘤化してしまい、さまざまな症状を引き起こします。長時間の立ち仕事の方、妊娠出産後の女性の方に多いとされ、日本人の10人に1人、女性の2人に1人発症するともいわれる良性疾患です。
良性疾患ですので、命にかかわる事はほとんどないですが、むくみや重だるさ、足がつるなどの症状が出現します。
放置すると皮膚障害をおこし、潰瘍化してしまう方もおり、生活の質(QOL)が損なわれます。そうならないうちの早めの治療をお勧めします。当院ではレーザー治療の専門医、指導医が診察、治療を担当します。お困りの方はご連絡ください。
<こんな症状でお悩みの方>
① 静脈がボコボコしている、拡張、蛇行
② 痛み、むくみ、重だるい、疲れやすい
③ 下肢がつる、こむら返り
④ かゆみ、湿疹、皮膚炎、血栓性静脈炎、色素沈着、潰瘍
瘤化 浮腫 色素沈着 潰瘍
<下肢静脈瘤になりやすい人>
① 女性
女性:男性=4:1とも言われ女性が圧倒的に多い疾患です。重症例は男性に多く、働き盛りの方が多いです。
② 妊娠・出産
妊娠、出産を契機に静脈瘤を発症する方が多いです。
③ 立ち仕事の方
調理師 パティシエ 美容師 販売員など長時間の立ち仕事に従事している方
④ 遺伝、家族歴
ご家族が下肢静脈瘤を持っている、手術を受けたことがある方は、発症リスクが高いとされています。
⑤ その他、肥満気味の方 慢性便秘症の方
<下肢静脈瘤の分類>
伏在型:比較的太い本幹が瘤化するものです。膝下の内側、裏側に瘤ができる事が多いです。
側枝型:本幹から枝分かれした静脈が瘤化するものです。
網目状型:3mm以下の細かい静脈が目立つものです。
クモの巣状型:1mm程度のさらに細かい静脈の拡張です。
① 伏在静脈瘤 ②分枝静脈瘤 ③網目状 ④クモの巣状
静脈瘤のタイプによって治療方法は異なります。一度ご相談ください。
<診断方法>
痛みもなく、体に影響のない超音波検査で、5分くらいで診断可能です。
<治療法>
① 弾性ストッキング
下肢を圧迫して静脈の流れを改善する目的です。しかし静脈瘤の根本的治療ではありません。
② 下肢静脈瘤血管内焼灼術(レーザー)
約1.8mmのレーザーファイバーで静脈の内側から血管を閉塞させる血管内治療です。逆流しなくなるため静脈のうっ滞が改善します。従来の手術と比べて傷が小さく痛みも少ないのがメリットです。
2011年より保険適応となった治療で、ストリッピング手術にとってかわり現在静脈瘤の標準治療となっております。現在波長1470nmのレーザー治療と、ラジオ波治療が閉塞率、合併症(疼痛、皮下出血など)の点で優れているとされ、日帰り手術が可能です。(当院では入院での治療も選択できます。遠方の方、お年寄りの方などにおすすめです。)
麻酔方法
静脈麻酔、局所麻酔にて麻酔を行います。(手術中に痛みがでる場合は追加投与が可能です。)
手術方法
まず、伏在静脈内にファイバーを挿入し、足の付け根あるいはひざ裏までファイバーの先端を誘導します。その後、静脈の周囲にTLAという非常に薄く希釈した麻酔を注射します。(これにより術中術後の鎮痛効果とともに、静脈周囲に麻酔の層を作り、焼灼時の熱傷の緩和、焼灼率の向上が期待できます。)
超音波で位置を確認しながら、焼灼を開始します。焼灼にかかる時間は約1~3分程度です。
血管壁が焼灼され閉塞し、逆流がなくなります。
膝下の残存する静脈瘤に対し、瘤切除やレーザー焼灼などを行い可及的に静脈瘤を除去します。
手術時間は片足15分~30分くらいです。
術後経過
術後は弾性包帯、弾性ストッキングにより圧迫療法を行います。
普段通りの生活をしてください。
翌日に包帯をはずしてシャワー浴が可能です。
手術の1~3日後に外来受診していただき、超音波にて検査を行います。
術後検査が問題なければ仕事も可能です。
1週間後にも診察させていただき、問題なければスポーツも可能です。
手術当日は麻酔を使用するため運転は控えてください。
足をもみこむ様なマッサージは1カ月は避けてください。
起こりうる合併症
皮下出血(2週間程度で吸収されます) 深部静脈血栓症、肺動脈塞栓症 神経障害(ピリピリとした痛み 感覚障害)皮膚熱傷 再発 など
合併症率は少ないですが、術後外来にてフォローしていきます。
静脈瘤の分類は様々ですが、専門医がその方にあった治療方法を見つけ、一緒に治療方針を決定します。
様々なあしの症状でお困りの方は、お気楽に一度ご相談ください。
和歌浦中央病院 血管外科 代表)073-444-1600
下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の実施基準による実施医・指導医